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最高裁判所第一小法廷 昭和27年(オ)734号 判決 1954年1月28日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第七点について。

訴訟費用の裁判に対しては独立して上訴をなすことを得ない。(民訴三六一条、三九六条、四一四条参照)これは、訴訟費用の裁判が本案の裁判に附随してなされるものであることに鑑み、この裁判と離れて費用の裁判のみの当否を上訴審で判断させることを回避したものに外ならない。それ故たとえ本案の裁判と共に費用の裁判に対し上訴が申立てられた場合においても、上訴が不適法であるとされ、若しくは本案に対する上訴が理由なきものとされ、従つて本案の裁判が変更されないようなときは、費用の裁判も亦変更すべきではなくこの点に関する不服の申立は許されないものと解するのを相当とする。しかもかく解することによつて、故意に本案につき理由なき上訴を敢てし以て費用の裁判のみに対する上訴の目的を遂げようとする脱法行為を阻止することができるのである。(大審院判例集九巻三七一頁、同一一巻二五二頁参照)

本件本案に対する上告が採用に値しないものであることは後述するとおりであるから、本論旨の上告適法の理由に当らないことは明白である。

論旨第一点乃至第六点は原審の裁量に属する証拠の取捨判断を攻撃し延いてその事実認定を非難するに帰着し、すべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものとも認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

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